小野耕世
私が大学で初めて教えたのは80年代初めの東大教養学部で、私の『アメリカ大衆文化』の授業に中田秀夫氏も出ていて『リトル・ニモ』のマンガについて鋭い質問をしたのを覚えている。その頃から日活にはいるのだと言っていたが、すぐに頭角を現わし、ホラー映画の大家になったのは嬉しい。彼の映画は一貫して知性的なのが私を惹きつける。恐怖の人形と女性たちをめぐるこのドラマも、知的抑制のなかできちんと作られているので、恐怖映画はこわくて苦手な私も見てしまう。いい主人公だ。
中西愛子
芽が出ない新人女優が、大チャンスとなった舞台で、人形に襲われ恐怖体験をする、中田秀夫のホラームービー。まず、ホラーとしてちっとも怖くないのが残念。昔、ある男が思いを込めて作った美しい人形の怨念が、〝劇場〟というモチーフにうまい具合に絡んでこない。主演の島崎遥香は、そのアイドル性と独特な雰囲気が相まって、映画の中で、面白い存在なのだが。彼女が人形に向かって最後に喝破する一言が痛快で、つまり、女のエゴの闘いが考察されていたらもっと怖かったような気も。
萩野亮
AKBの全メンバーを対象に主演俳優のオーディションを開いたという。
作中でもセンターが次つぎに入れ替わるAKB的な展開がおもしろいのだけど、人形が少女たちの野心(→殺意)の代行者となるのかと思えばそうではなく、古典的な「呪いの人形」の範疇におさまっているのがものたりない。「呪い」とすれすれの野心を抱いているのは他ならぬ少女たちであるはずだから。その意味では、島崎遥香が現に勝ち抜いたくだんのオーディションや総選挙のほうが本作よりこわい可能性がある。
解説
あらすじ
若手女優の沙羅(島崎遥香)はなかなか伸び悩んでいたが、新作舞台で端役ではあるものの出演のチャンスを掴む。香織(足立梨花)や葵(高田里穂)ら女優たちは、主演の座をめぐり火花を散らしていた。そんな中、劇場内で美術スタッフの変死体が見つかったのを皮切りに不可解な事件が頻発。真相究明に乗り出した沙羅とスタッフの和泉(町田啓太)は、恐ろしい存在がこの劇場に潜んでいることに気付く……。
http://www.kinenote.com/main/feature/review/newest/p3.aspx
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